一般社団法人アットアイランド

東京の離島出身の若者たちが「僕らの育ってきた島々が、これからも生命と笑顔の溢れる場所として続いてほしい」という想いカタチにするため、三宅島を拠点に東京諸島の連携した地域づくりにチャレンジするプロジェクト。http://atisland.com/index.html

『もも』との出会い

フッとした時に、気になって手に取ってしまう本がある。

「時が来た」と言わんばかりにこちらを見ている。

今まで近くにあろうとも興味もなにもなかったのにである。

必要な時に、

必要なものは浮き出て現れるのだ。

いや、論理的に言えばこちらが選んでいるはず。

普段あまり読書家ではない僕だが、

時にその本に求められるがごとく引き寄せられて手に取り、

その内容が僕の滞っていた血液を流してくれる。

そんな出会いを数回してきたことがある。

 

今回は普段読むことがほとんどない小説。

しかもとりわけて興味の薄い児童文学書である。

日本でも有名な『もも(ミヒャエル・エンデ作/大島かおり訳)』である。

 

恥ずかしながら、存在とあらすじはなんとなく知っていたが、

この歳になるまで読んだことがなかった。

 

「あ〜時間泥棒のやつね」

読みもしないで知ったふりをしていた自分を恥じたい。

 

【あらすじ】

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円形劇場に迷い込んだ1人の孤独な少女もも。

惨めな境遇にも関わらずあたたかい地域の人々に受け入れられて暮らしている。

そんな中でももにはある特別な力があった。

それは人の話を心から聴くことのできる力。

ももに相談したものたちは自らの進むべき道を思い出しいきいきと帰っていく。

そのうちに、ももはいなくてはいけない大切な存在となる。

 

その裏で、事件は進行していた。

「時間貯蓄銀行」の者だと名乗る「灰色の男たち」が、

多くの大人たちの時間を奪っていたのだ。

時間を奪われた人たちは、効率ばかりを求め心のない仕事や生活に追われる。

 

そんな中、ももは子どもたちの異変に気がつく。

以前は純粋にもものところに遊びに来ていた子どもたちが、

行き場を失って逃げるように集まってきているということに。

 

ももは以前から良くしてくれていた大人たちのところに訪れる。

仕事に誇りを持っていた人たちが心を失いかけて目先の営利にのみ猛進している。

ももはお世話になった方々に話を聴きに行くことを続ける。

 

そんな折に、もものところへ灰色の男が現れる。

ももは恐れながらも懸命に対話し、

灰色の男の本音(企み)を聴き出してしまう。

 

親友のベッポとジジ、そして子どもたちと、

大人たちの時間を取り戻そうと奮闘するが届かず、

帰って灰色の男たちの逆鱗に触れ、追われることになる。

 

そんな時に現れたカシオペイアというカメ。

このカメの案内で難を逃れ行き着いたのは、

時間を司るマイスター・ホラのところ。

 

それから時間を取り戻すためのももたちの熱い戦いが始まる。

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単なる時間泥棒と戦う少女の話ではない。

 

時間とは何か、

豊かさとは何か、

1970年代の作品にも関わらず、

まるで現代の日本人に警鐘を鳴らしているかのような強烈な風刺。

この作品に出てくる暖かい田舎の地域は島にリンクし、

そして大都会はそのまま首都東京にリンクして見えた。

「島時間」その言葉に含む、島の価値も少し見えた。

 

文中に

「〜その時間にどんなことがあったっかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。」

効率、生産性、利益をただ高めていった先に人間の幸福はあるのだろうか。

時間は生きることそのものであって、

それが良いか悪いかは心が決めるのか、と。

 

「忙しい・時間がない」

その言葉が大人はもちろん子どもにまで蔓延している現代社会。

時計に表示される機械的な時間が減ったわけではない。

人間が人間らしく生きるためのゆとりのある時間が減っている。

そうすると、自分が「どう生きたいか」を考える必要がある。

そのために、限られた時間をどう使っていくか、を考え実行していきたい。

 

最後に今の自分に最も響いた言葉を引用したい。

ももの親友である道路掃除夫のベッポの言葉。

「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。(中略)そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげていく。ときどき目を上げて見るんだが、いつ見てものこりの道路はちっとも減っていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はまだのこっているのにな。こういうやり方は、いかんのだ。いちどに道路全部のことを考えてはいかん。わかるかな?次の一歩のことだけ、次のひと呼吸のことだけ、次のひと掃きのことだけを考えるんんだ。いつもただ次のことをだけをな。すると楽しくなってくる。これが大事なんだな、楽しければ、仕事がうまくはかどる。こういう風にやらにゃぁだめなんだ。ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。どうやってやり遂げたかは、自分でもわからんし、息もきれていない。これが大事なんだな。」

 

ビジョンとか構想とかいっぱいあるけども、

まずは次の仕事、次のことをちゃんと心込めてやってくこと。

そうすると次にやるべきことも見えてくるはず。

そしていつか振り返った時に、いい道だったなって思えればいい。

心がなくなった瞬間に仕事は作業に降格する。

島にいながらも例外にあらず意外と忙しいもの。

心を奪われないように、

息抜きながら一歩一歩大切に楽しみながら進んでいきます。

 

固まっていた血液が、流れ出した。

自分の世界(城)の中でもがいて苦しんでいる時は、

本、音楽、自分と違う生き方をしている人の話を聴いてみる。

自分じゃない誰かの世界観にのめり込んでみる。

そうすると、道は拓ける。

かもしれない。

 

By いとーまん

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